吉目木 晴彦の「一枚の写真から」
第四回「思い出の風景」
神奈川県の三浦半島にある観音崎は、明治元年に、日本初の洋式灯台が出来た場所と言われています。
今、観音崎は、海に面した小高い丘全体が公園になっています。樹木に覆われた広大な敷地は格好のピクニックコースです。休日には、大勢の家族連れや、ジョギングをする人達でにぎわいます。海を見下ろす丘の上に立つと、対岸の千葉県富津市も見えます。
花の広場近くにある遊具場では、子供達がトランポリンの上で元気良く跳ね回り、ローラー式のすべり台を数珠繋ぎになって流れ降ります。子供にとっては、のびのびと駆け回ることの出来る公園などの方が、乗り物が揃った遊園地やテーマパーク以上に、夢中になって遊べるものなのかも知れません。閉園時間が迫っても、なかなか帰ろうとはしません。たぶん、帰りの車の中では、ぐっすり眠り込んでしまうのでしょう。
楽しみの一つは、家族で食べるお弁当です。地面に座り、風に吹かれて食べるおやつやお弁当には、レストランなどでの食事とはまた違った、格別のおいしさがあります。時間を気にすることもなく、ガサゴソと手提げ袋の中をかき回してお菓子を引っ張り出したり、おむすびや唐揚げを詰めたタッパーを並べてつまみ食いしたり。自分の子供の頃を思い出してみても、親が大奮発して連れて行ってくれた有名な観光地や、遠出して行った景勝地より、かえって、どことも知れない芝生の庭、田圃の脇でお弁当を食べたことが、記憶に残っていたりします。
あれはどこだったろう。光景は鮮明に覚えているのに、場所がわからない。皆さんにも経験がありませんか。
Hixさんが応募された写真は、そんな懐かしさをたたえた1枚でした。
用水路に尻餅をついてしまったのは、お兄ちゃんでしょうか。妹は気付かずに、お気に入りの飲み物を抱えています。
これは秋の風景ですが、場所はわかりません。
遠くに山並みが写っているのは、誰もがどこかで出会った、日本の典型的な風景だと思います。大人は忙しさにまぎれて、この日のことをじきに忘れてしまうでしょうが、子供達はずっと覚えているかもしれません。
やがて2人が大人になり、この1枚の写真を見た時に、何を思い出すのでしょうか。
永くアルバムに残しておきたい、素晴らしい写真です。
