吉目木 晴彦の「一枚の写真から」

第七回「蝉の鳴く町

猛暑です。

7月には東京都心部で39.5度、観測史上最高温度とのことで、今年の暑さは、ちょっと身の危険を感じますね。怖くてプールにも行けません。
日焼けすると皮膚が赤くなり、毎夏、苦しい思いをする質なので、この陽射しをプールサイドで浴びたりしたら、夜、七転八倒して眠れなくなること必至です。休日のたびにプールに行きたがる子供から逃げ回り、「プールは一夏に2回まで」我ながら理不尽な・・・・。

そう言えば、10年ほど前にも、酷く暑い夏がありました。前年の冷夏で、外国から米を輸入することになった年だと思います。輸入米が口に合わなくて捨てる人が出たりして、日本人はここまで食べ物を粗末にするようになったか、輸出国に失礼だ、と連日テレビや新聞が騒いでいた年です。
大昔の飢饉の記録を持ち出して、泥の食べ方など特集をする週刊誌まで現れ、歴史学者のコメントを載せていました。そんな記事を企画する方もアレですけれど、コメントを寄せる方もどうかと思ったものです。そこへ酷暑。アスファルトの上を歩いていると靴底にグニャッとした感触があり、本当にコメの罰でも当たったかと思う暑さでした。

と思ったら翌年は、アメリカ内陸部ではさらに凄いことになり、何しろ牧場の牛が暑さで死ぬ。あまりの熱波に屋外作業などできず、始末できないまま放置しておくと、体内発生したガスで牛の死骸が爆発する。牛が爆発する夏というのは、想像を絶しますけれど。(中西部で起こっています)
地球温暖化は観測上の話だけでなく、もう実感のレベルですね。
冬も、昔は、肌が粉をふいたり、耳がちぎれそうに傷む寒さが東京でも普通だったのですが、最近は暖冬ばかり。
実は暖冬ではなく、冬そのものが変質しているのかもしれません。

蝉の鳴く町
aipapaさん(埼玉県)の作品

気候が妙な具合になっている中で、蝉は――正確にはアブラゼミは、と言うべきでしょうか、律儀に変わりません。蝉の鳴く声が響き渡るといよいよ盛夏、という季節感はまだ生きています。変わったのは、都内ではアブラゼミ以外の蝉をあまり見かけなくなったことでしょうか。ミンミンゼミやヒグラシ、ツクツクボウシなど、ずいぶん少なくなった気がします。暖冬ではなく、冬そのものが変質しているのかもしれません

今では農地以外、全国ほとんどの道で舗装が進み、特に都市部はびっしりとコンクリートやアスファルトで塗り固められているのに、梅雨が過ぎると、アブラゼミは一斉に出てきて、町中で鳴いています。
アブラゼミは5年くらい地下で成長するそうですが、どうやって地下に潜り、地表への出て来るのでしょうね。
地表に出ようとしても、コンクリートで塞がれてしまって、出られないものもいそうな気がしませんか?それでも毎夏、これだけ多くのアブラゼミが現れるのは不思議。
5年分のアブラゼミがじっと地下で待機している。

ベトナムのハノイで、7世紀以降1200年間もの歴代王朝の王城遺跡が、同じ場所から見つかって話題になっています。
遺跡は各時代のものが重なっていたそうですが、アブラゼミも地面の下で何層にも重なって、地表に出る日を待っているのでしょうか。ちょっと不気味ではありますが、タフな昆虫ですね。
モンシロチョウもアゲハチョウも見る機会が減ってきました。テントウムシも少なくなった。玉虫などは子供の頃、そこら中にいたものですが、ここ10年以上、見た記憶がありません。カブトムシやクワガタは、スーパーマーケットに並んでいますが(最近は外国のカブトムシまでよく見かけます)、玉虫は、色合いが美しいとは言え、ツノがあるわけでもなし、まぁ、地味な虫ですから・・・・人知れず、消えつつあるのでしょうか。
昆虫学者がいよいよ数が減った、と言い出したら、新聞などあわてて大騒ぎするのでしょうけれど。

今回、送って戴いたaipapaさんの蝉が孵る写真はちょっとビックリしました。
自然の状態でのクライマックス・シーン、光量の得られる昼間、こんなシャッターチャンスはなかなか無いと思います。

生まれた卵のうち、どれくらいが地上に出て、空に飛び立てるのでしょうか。懸命に体を反らす姿が、感動的ですね。